杉村春子(1909-97)とは新劇を代表する女優。本名は石山春子。
杉村春子は広島市に生まれ、築地小劇場の研究生を経て、1932年友田恭助らの築地座結成に誘われて参加、小山祐士作品で頭角を現した。築地座解散後、37年文学座の創設に参加し、翌年試演会を開始し、40年ごろからは同劇団の中心メンバーとして活躍した。
杉村春子は新劇を代表する女優として、『欲望という名の電車』『華岡青洲の妻』『ふるあめりかに袖はぬらさじ』『華々しき一族』などの代表作に出演。特に森本薫作『女の一生』の布引けい役は、上演回数947回という当たり役となった。
また映画でも「東京物語」などの小津安二郎作品の常連メンバーだったほか、今井正「にごりえ」、黒沢明「わが青春に悔なし」、成瀬巳喜男「めし」などにも出演。最後の映画出演となった新藤兼人監督「午後の遺言状」の主演で、95年毎日映画コンクール女優主演賞を受賞した。最後の舞台は、96年9月から10月に文学座アトリエで上演された森本薫没後50年記念の『華々しき一族』。
新派俳優や歌舞伎俳優との競演を通じて伝統芸を吸収し、それを新劇のリアリズムと融合させることで独自の演技スタイルを確立。新劇を体現する女優という意味でも杉村春子は後進の育成に多大な功績を残した。